推薦文

五輪金メダリスト & プロボクシング世界王者

村田諒太さん

Number 1064号


国民的声優

矢島晶子さん(クレヨンしんちゃん役)

沖縄での伊藤先生の初めてのレッスン、内心ドキドキ。しかし授業が始まってみると…。緊張なんてすぐさま吹っ飛んで、とにかく夢中になっていました。難しい演技論も先生の楽しい口調や実演によって 集中して聴く事が出来ました。自分の全部を使って表現する。楽しかった!また是非レッスンを受けたいです!

※しんちゃん卒業後に受講


神戸大学  パフォーマンス部門 准教授  谷正人 さん

私の専門分野はいわゆる「民族音楽」の研究です。一見伊藤氏の専門分野とは畑違いかのように思われるかもしれませんが、イランのサントゥールという楽器演奏を通して人前でのパフォーマンスも行っている関係で、緊張や集中力の問題にも深く関心を抱いておりました。そんな中、氏の著書と出会いまた演劇クラスにも参加し非常に感銘をうけました。伊藤氏の哲学および方法論は演劇のみならず他分野に広く応用が可能なものです。 以下では、私のワークショップ参加経験の一部をお話しし、それがなぜ私の専門である音楽演奏にも有効なのかについてお話ししたいと思います。 経験した沢山のワークのうち、私にとって大変有益だったもののひとつが、「例えば文の冒頭から長くても読点くらいまでのごく短いフレーズ」を延々と声に出しながら、抑揚やアクセント、声質などを極端に変えたり、顔をゆがめたり身体を動かしたりしながら無限のヴァージョンを作り出してゆくというワークでした。やる前は、せいぜい10パターンくらいだろうと思っていましたが、いざやりだすと、パターンが限られていると自分が飽きてくるので(ここがポイントなのです。飽きさせるためにできるだけ短いフレーズがよい)自然に工夫して、それも常識内の工夫だとまたヴァリエーションが限られてくるので常識も取っ払っていろいろ試してみると、やる前には想像もしていなかった言い方・表現・おふざけがとてつもなく出てくるのです。 このワークショップは演劇ベースなので、それがどこまで音楽に使えるのかなんて早急な判断は少なくとも参加中はしなかったのですが、それでもこれを音楽に置き換えると、これまでの自分の練習方法がいかに「うまく弾こうとすること」に偏っていたのか、あるいは目指そうとしている表現(完成形)に真っすぐのみ向かおうとしていたのかがわかりました。 「使うか使わないかは後で決めること。今は、ある決めたフレーズから無限の表現ヴァリエーションを実験的に面白がって常識に囚われず価値判断をせずどんどん生み出す」 このように準備されたうえで実際に本番で使う「一つの弾き方や解釈」は、それだけを準備した場合と比べ深みや厚さが大きく異なります。特に即興演奏の分野においては、瞬間的に引き出せる解釈の幅が広がるとともに、たとえさっきと「同じ」フレーズを弾いていても、その瞬間瞬間自分が選んだという能動性の付与に繋がります。 クラシック音楽で如何に「作曲家の意図」という権威があろうと、イラン音楽の世界で如何に「イランの正統な弾き方」があろうと、弾いている瞬間は自分のものだ!こんな風に弾くのも面白い!って発見する作業そのものが練習であり、また本番なのだと再認識させてくれるものだったのです。 上記はほんの一例ですが、伊藤氏のワークに通底しているのは、「焦ったらアカンっていうくせに、プロセスを言わんとすぐに結果を求める間違った教え」(『緊張をとる』p.178)という言葉に代表される、2段階/3段階思考(p.260~270)の必要性・有用性です。その意味において、氏のワークショップは、単に演劇あるいは人前でのパフォーマンスに関してのアドバイスのみならず、「学ぶ・何かに向けて準備する・人に教える」ことについての世の中の誤解にむけた痛烈な批判でもあり、あらゆる立場の参加者にとって大変示唆に富むものであると思います。

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